この記事は、2018年の12月に乗車したものを思い出して2019年12月に書いているものです。
この記事で乗車した車両は今はこの区間を走っていません。北京西~昆明南を走っているはずです。というのも中国はしょっちゅう新線が開通してしょっちゅうダイヤ改正してしょっちゅう新車が入っているので。
今回乗るのは中国の夜行新幹線。まず日本ではこれだけでも信じられませんが、単なる夜行新幹線なら中国にめっちゃ走っています。その中でも、今回は三編成しかない、レールの方向にベッドが向いている動臥と呼ばれる寝台車両です。
こちらの新幹線
中国の寝台新幹線の動臥のお話
動臥といっても(オタクの中で)広義と狭義があり、広義の動臥っていうのは動車組=新幹線に搭載されている寝台。予約サイトではこれも動臥と表示されたりします。実際は四人コンパートメントの寝台で、客車列車にあるのとおんなじ形です。ただし、新幹線の車高の中に二段寝台を積んでいるので、高さは狭めです。
今回のは狭義の動臥。さっき説明したように列車の進行方向にベッドが向いているやつです。中国広し、新幹線だけで1000編成以上はある(要出典)中国において3編成しかないレア中のレアな車両なのです。
つまり、日本で言えば開放A寝台みたいなものです。もう10年以上前なくなっちゃったけど。で、中国のほかの標準的な寝台は開放B寝台みたいなもの。
通路の左右に二段寝台が、並ぶ。
そして、寝台のつくりがめっちゃ進化しています。真ん中に通路があり、左右に寝台が広がっているのですが、後ろの寝台の足元を入れるところが前の寝台のテーブルになっていて、同じサイドの寝台でも左右に微妙にずれているわけです。窓側に寄ってるベッドと、通路側に寄っているベッドがあるわけですね。で、しかも二段寝台なのでそれが上下にあります。飛行機のビジネスクラスの配置を想像してもらえば少しは分かるかもしれません。
これは、下段、窓側。手前のテーブルのところが後ろの人の足を入れるところ、右側のくぼみは上段への足場兼、前のベッドの枕元になっています。
窓側であれば通路から離れていてプライバシーが高い。
こちらは通路側上段。開放的で、窓側にスペースがあるためにそちらのテーブルなどに荷物を置くことができ、荷物管理的には安心。
私は、二段目通路側の寝台です。ベッドが通路側にあります。
こちらは向かいの寝台。あちらはベッドが窓側にあり、少し奥まっています。
枕元にはコンセントとライトのスイッチ。
横にはテーブル。ここに飯を置いて、その横にキャリーバッグ立てたらコンパクトに収まりました。窓側だから防犯上も安心。
このテーブルの下に前の人の足が入るわけです。
足下はだいぶ狭くなります。が、まぁ気にならないです。
カーテンを閉めればご覧の通り。
中国の新幹線車両CRH2シリーズのお話
そして、車体もすごいです。名前はCRH2EのNew Generationと呼ばれる新タイプ。
CRH2系列はもともとは日本のJR東日本のE2系を輸出したもの。
E2系。
CRH2AはE2系ほぼそのままで、8両編成最高速度250km/h
CRH2A 構造はいっしょ。
CRH2BはCRH2Aの16両バージョン
CRH2Cは動力比を変えて最高速度350km/hにした車両。ただし、E2系の設計最高速度を超えていて日本のメーカーからお叱りを受けてからは最高速度320km/h程度
これはCRH2C 青いラインが前まで来て、目が追加されている。
CRH2EはCRH2Aの車体に先頭車以外寝台を積んだ寝台新幹線。ちなみに2011年の衝突事故で地面に埋められたやつです。
これが基本。
さらに、
CRH2Aは見た目はほとんど変わらず座席配置を中国標準にそろえたCRH2A統型が大量生産されてざっと数百編成、中南部ならどこでも走ってます。
車内はまさに新幹線ですが、これは中国です。
さらに、
CRH2Gは寒冷地向けにデザインを変更し耐寒性能を上げたもので、これ以降はもうE2系の面影がない顔です。
CRH2Eは最初はE2系の顔でしたが、新しいもののみCRH2Gと同じ顔に変更。さらに、その新しいものの中でも最新の3編成だけは、寝台の向きを変えて今回乗るパターンの車両に。この3編成は、二段寝台の二段目にも窓が設置されていて外から見たらすぐわかります。
さらにさらに、CRH2系列はスピードアップし、CRH380A系列として最高速度350km/hの標準型として活躍しています。
で、その3編成しかない今回乗る列車は、中国では今まで当たり前だった、四人用個室という概念を覆し、一人一人のプライベート空間を作ることができる革命的な車両なのです。これまでは4人でコンセントとかテーブルを共有し、電気消すタイミングも他の人に合わせるしかありませんでしたが、この列車なら各寝台にコンセントがあり、カーテンを閉めて電気を消せば自分のタイミングで消灯ができるのです!!!
これはお隣の4人寝台のCRH1E
この写真じゃわからんか
車両のすばらしさを語るだけで1500文字書いてしまいました。
本題に入りましょう。
夜の上海駅へ
D312次は、上海の市街地にある上海駅から発車します。以前の記事で上海から重慶行きの列車を紹介しましたが、あちらは上海南駅。こちらのほうが都会です。
乗車当日は雨。前日は上海万博会場の近くのメルセデスベンツアリーナで乃木坂46の初の海外単独公演を見てました。それが上海に来た目的です。で、人民広場駅近くの南京東路の南側のホテルに泊まってました。朝荷物を駅に預けて、夕方上海駅に発車前に到着し、駅の出口付近にある荷物預かり所に預けていた荷物を回収し、駅前のお店で軽くお食事を。マックとかもあります。
雨の上海駅
向かいにマック
上海駅に入場時には例によって身分証提示と切符の確認からはじまり、荷物検査を通って待合室へ行きます。
上海駅は上海虹橋ほどは大きくなく、ホームは十数本。そこで客車列車も新幹線もさばきます。とはいっても新幹線でも長距離列車も来ており、北京行きの最速列車の一部とか成都行きの長距離列車も出ていて、上海虹橋の発着列車の重要な便の一部を上海駅に移して利便性を追求したという感じです。
ただし、それ以外基本的に新幹線だと南京まで行く短距離のものが主です。
むしろ、客車列車が頻発しています。客車列車は上海南かここ上海駅を利用し、こちらのほうが圧倒的に本数が多く北は哈爾浜、西はウルムチへと長距離列車が走りまくってます。南の方へ行く列車は上海南駅から出るものが多いです。
で、今回乗る列車はまた非常にややこしい扱い。車両的にも列車番号的にも新幹線(D列車=最高速度250km/hの高速列車)なのですが、北京まで全区間在来線を走行します。なので実際に出す最高速度は160km/hなのです。客車の最速のZ列車と同じです。そもそもはZ列車を新幹線車両で置き換えてD列車になった形なので。
中国は、新幹線車両が在来線を走ったり、客車列車が田舎では新幹線線路走ったりとか、普通にあります。規格が同じなので。
しかし、冒頭で言ったようにこの車両は一年ちょいで北京~昆明へと転戦。あちらは3000km以上あり、軽く東京~大阪の6倍の距離。それを一晩で走りぬくため、250km/hで高速鉄道の線路をぶっ飛ばしてその実力をフルに発揮しております。
で、代わりに今入っているのは、CR200Jと呼ばれる動力集中式の緑色の車両。寝台は客車のものとほぼ同じで評判はよくありませんが、客車の160km/hで走るZ列車や、在来線経由の夜行新幹線を置き換えるために急速に増えています。200km/hまで出す客車の寝台列車と考えれば速いほうで、列車番号にもDが割り振られています。登場から一年程度ですが、北京から上海、南京、杭州などなどの列車に続々投入されています。
今回の上海~北京の距離は東京~熊本くらいの距離である1200km程度。最速の新幹線なら4時間半かかりません。それでは夜行列車には時間が短すぎます。なので在来線経由なのです。
またまた話が逸れました。
列車が待つホームへ
待合室で発車の30分前?くらいから改札が始まり、パスポートと乗車券を見せてホームへ下ります。
駅のキオスクみたいなやつ。ふつーに社会主義核心価値観あります。
これは待合室の発車標。在来線側なのでZ列車が多め。
乗るのは三段めのD312の北京南行き。
四段目はウルムチ局のZ40烏魯木斉行き! めっちゃ長距離列車です。ウイグルです。
ホームに降りるこの瞬間はいつでもたまりません。
ホームにはCRH2Eの新型が!!!
冒頭の写真のやつです。
そしてお隣には深圳北行きのCRH1Eもいます。
両方とも寝台新幹線!!!!
こちらはCRH1E
深圳方面は客車であれば上海南、高速鉄道であれば上海虹橋から出るのが通例ですが、一本だけ市内の上海駅から出て上海虹橋を経由する便があるらしいです。隣に泊まっていたのは、それ。
なんと、寝台新幹線が一つのホームに二本! 感動ですね。
あちらは、杭州とか温州とか厦門とかを高速鉄道経由で通って深圳へ行きます。片や中国の南へ、片や北の首都へ。
二段寝台の二段目にも窓がついているので、こんな感じの側面です。
そういえば、列車発車前に駅の構内のハンバーガー屋でセットを買いました。これで寝台のなかで夕飯が食えます。においがきつい???? 中国の夜行列車なんてみんな匂うカップ麺食ってるから大丈夫大丈夫
上海駅を出発&車内探検
19:10に発車します。定刻だったはずです。
上海からしばらくは複々線。内側が高速鉄道線で外側が在来線。この列車は在来線を走ります。
上海から300km先の南京までは、高速鉄道が2路線、在来線が1路線あって、とにかく、やばいです。
高速鉄道でも、在来線よりを走るやつ(上海~南京の短距離列車が中心の路線)と、ばりばり各都市のはずれに新駅作りまくってぶっ飛ばす路線(北京までつながってるやつ)があり、需要やばいです。どちらも最高速度350km/hを出します。
一番速い列車は上海虹橋から南京南まで59分。東京から仙台or名古屋まで59分と考えると尋常じゃなく速いです。ただし、日本と違って都心部でのろのろ走ったりせず、上海虹橋を出たらすぐに350km/hでひたすらぶっ飛ばしてノンストップ。途中停まる列車はふつうに1時間半とか2時間以上かかります。で、在来線だと4時間くらい。
今回は在来線なので、比較的のんびりと160km/hで飛ばしていきます。とは言っても日本のどの在来線よりも早く成田空港アクセス線のスカイライナーのスピードです。でも、車両も新幹線型だし、線路も整備がしっかりされているので全く揺れません。
途中停車駅は蘇州と南京だけです。両駅で乗車する人を拾って、南京を出たら翌朝の北京南までノンストップで行くわけです。
今回の時刻表です。
蘇州に着くと、お隣には別の列車が。列車番号までは覚えてません。
蘇州は19:58。定刻で出たはずです。
車内には、売店と軽食を食えるコーナーがあります。
せっかくなので、車内で飲み物を購入し、自分の区画へ。
常温でした。おいしくない。これも、中国の旅あるある。
これがその売店。中国らしい働き方をしてらっしゃる服務員がいます。
なんだっけ、これ。
洗面所はめっちゃきれいです。ちなみにトイレも中国では珍しい洋式です。使ってませんが。車内の方が街中より綺麗だと思います。
ドア。完全に新幹線のそれです。
ずっとこれくらいのスピードで流していきました。
そういえば、売店の車両の半分だけ、従来のような4人コンパートメントの軟臥があります。編成中でこの5室だけ。
ほかの寝台新幹線であれば、14両がこれ、2両が座席車。
今回の車両は15両が動臥、1両がこれ。
ハンバーガーを食いながら、カーテンを閉めて車窓を眺めます。カーテンを閉めることでプライベート空間ができ、なんとお着がえまでできてしまいます。
そして、二段ベッドの二段目にも窓がある最新仕様のおかげで車窓が眺められたわけです。
中国の列車は新幹線だろうがなんだろうが必ず各車両に給湯器があります。これで、持ち込んだカップ麺とかを熱々で食べられるわけです。
あちらの国は、あたたかい食べ物にこだわりがあるようで、日本の冷えた駅弁よりもあたたかいカップ麺の方が好まれるとか好まれないとか。
蘇州を出てまたひた走り、21:41に南京に着くはずですが、21:35くらいには着きました。
中国ではよくある早着です。早く着く分には全然いいですからね。
南京、この数日前に観光はしたんですが、12/13の大虐殺記念日の前に大虐殺記念館が閉まってて満足に見れませんでした。それでもおいしい餃子は食べましたが。
今日は通過するだけ。
ここを出ると北京まで車両から出られないということで、ホームには気分転換にタバコを吸う人々がたくさん。私も寝台のスリッパのままでホームをお散歩します。いい雰囲気です。
ホームでの喫煙は大丈夫なのか分かりませんが、咎める人はいません。
昔ながらの南京駅1番線。
一方の南京南駅はやばい新しいでかい半端ない駅です。
車両の横の表示はCRH3C系列っぽい。
発車時刻は21:46なので、あっという間に車内に戻ります。
南京を出ると、翌朝北京南到着は7:07。
南京まで並行していた長江は、ずっと内陸方面から流れているので、北へ進路を向けるこの列車はしばらくして南京長江大橋を渡ります。ありえない程長いわけではなかったですが、河口部の荒川くらいはあります。
驚くべきはここは河口から300kmあるってことですね。デカイ。
ちなみに長江の河口では対岸が見えません。
河口から100km行った重慶でも長江を見ましたが、ふつうにでかい。多摩川の河口くらいあって、客船が普通に行きかいます。
ここらで22時過ぎとなり、翌朝の到着も早いので眠りにつきました。
翌朝、北京着
翌朝、うとうとしながら現在地を見ると、天津付近。速いですね。もう天津。
天津の地理はよーわかりません。たぶん、天津西駅を通ったはずです。
天津にも天津西、天津、天津南などのでっかい駅がたくさんあります。
で、天津から北京間も上海南京間と同じように高速鉄道2路線と、在来線があります。
距離的には120kmくらい。東京から沼津とか、前橋とかそれくらいの距離感です。
そして、この区間の京津城際線は、350km/hノンストップでぶっ飛ばして30分ほど。これが一時間6本とか走ってます。半端ないです。北京天津間。
100kmは新幹線乗らないみたいな日本の感覚とは大違いで、短距離の大都市間を全力でぶっ飛ばしてくっつけちゃうわけです。天津と北京はもうすぐそこです。30分で着くんだから。
一方のこちらは引き続き在来線を160km/hで快調に飛ばします。眠いのですが、車窓をみるとだんだん夜が明けて、線路が集まってきて、もうちょっとしたらあっという間に北京南駅です。
北京南駅は市街地からちょっと南に行った高速鉄道の駅で、在来線は端をササーっと通過して市街にある北京駅まで行くのが普通ですが、この列車は北京南駅の在来線側に設けられたホームに停まってそのまま終点です。せっかくなら北京駅まで行ってほしかったのに。7:07着ですが、数分早く着いたはずです。
そして、そして、寒い。
上海は12月でも最高気温だと20℃近くありましたが、北京の朝は、氷点下。寒い。
そりゃそうです。上海から1000km近くひたすら北上したからねぇ。
北京南のほかにも北京西とか北京とかのターミナル駅がある首都北京。北京南は天津とか、済南徐州南京上海杭州などの海岸に近い方面へ行く列車とか、潘陽大連哈爾浜などの東北部へ向かう列車が出ています。
一方北京西は、内陸部や南の方へ出る列車。石家荘鄭州武漢長沙広州さらには香港をはじめ、西安成都重慶貴陽昆明などへ行く高速鉄道は全部こっち。
北京駅は主に各方面の客車列車ですが、一部東北部へ行く高速鉄道も発着します。天安門からも割と近い良い立地です。
そして、今ちょうど北京北駅も開業するみたいです。呼和浩特方面とかに新しい高速鉄道がつながるそうで。
中国の高速鉄道は年1000km以上ずつ開業しててもうわかりません。
朝の写真、全然撮ってません!
ただ、北京は写真撮影にうるさく、先頭まで行って撮ろうとしたら制止されました。
なので先頭からちょっと手前の写真。これが北京南駅です。
北京をぶらぶら
寒い北京に降り立ったのちは、鉄道オタクとかもしましたが、やっぱり、北京は天安門に尽きます。天安門広場の圧倒的オーラはヤバかったです。
あとは観光の写真を貼って終わりにします。
微妙な撮影地ですが、駅近です。
これはCR400BF-B だっけ
盧溝橋
正面から天安門。
オーラやばし。
五星紅旗がたなびく!!!
夜はまた圧倒的な雰囲気でした。
なお気温は氷点下。
またまた7000字書いてしまいました。
おわり。